診断・治療

診断方法(検査)

 問診や触診で、リンパ浮腫とある程度は診断できますが、リンパ系障害の範囲を詳細に判断することはできません。
一方、リンパ系障害の検査法としては、リンパシンチグラフィー、インドシアニングリーン(ICG)検査、SPECT/CT、MRリンフォグラフィー、リンパ管造影、超音波検査などがあげられます。静脈のうっ滞性病変があると、むくみの症状は影響を受けます。その静脈系の異常には超音波検査が用いられます。
光生病院では、ICG検査と超音波検査、そして静脈系異常の超音波検査を実施しています。一方、連携している岡山大学では、リンパシンチグラフィー、ICG検査、SPECT/CT、超音波検査が可能です。最も重要な情報が得られるリンパシンチグラフィーとインドシアニングリーン(ICG)検査について説明します。

リンパシンチグラフィー

標準的な診断検査です。
放射能をもつ薬剤(アイソトープ)を手や足に注射し、それがリンパ管を流れる様子をシンチカメラで撮影します。正常のリンパ管は線状に、むくみの場所は雲状にみえます。上肢や下肢全体のリンパの流れの傾向をつかむのに適しています。
世界的には、リンパ浮腫の確定診断として用いられています。

インドシアニングリーン(ICG)検査

上肢は5つ、下肢は4つのリンパの道があり、その障害の程度を検査します。

 岡山大学の研究による新しい解剖理論による特徴的な検査です。
上肢のリンパ管の道と下肢のリンパ管の道は、それぞれ腋窩(わきの下)や鼠径部(足の付け根)のリンパ節に合流します。この検査で、どの道が障害されているのか、またどの範囲にリンパ液の漏れ(むくみの部位)が生じているのかが予想できます。早期の発見にも有用で、病期の進行に伴い正常な道が消失していきます。
この結果で、一人一人異なった保存療法と手術療法の内容をを決めることになり、最も大切な検査です。
患者様の理解の助けになり、また持参すべき記録となります。 治療中のリンパ系障害の経過をみるのにも有効です。インドシアニングリーン(ICG)という緑色の薬液を、手には5か所、足には4か所注射します。リンパ管に取り込まれた薬液は、光りを当てると蛍光を発します。それを特殊なカメラで観察し、それぞれのリンパの道の正常部位(線の様に見える)と障害部位(銀河の様に見える)を確認します。リンパ管吻合術などの手術を行う際にも、リンパ管を探すために使用します。

治療方法

保存的療法(複合的理学療法)

最も大事な治療法です。

 一人一人で診断が異なることに加え、年齢、体形、日常生活動作を含めてセルフケアが可能かどうか、家族のサポートが得られるかどうか、など治療にあたり多くの考える点があります。

〇よくある悩みとして
・スリーブがきつすぎて、手背が腫れてしまう
・炊事や仕事でスリーブがつけられない
・ストッキングを履いても皴になってしまう
・自分でストッキングが履けない・家族のサポートが得られにくい
・古い着衣を装着しつづけいて、圧がかからない
・ドレナージが上手くできない
などがあります。

外来や入院で、専門の理学療法士・作業療法士が一人一人を見つめて、きめ細かな調整と指導を行っていきます。
通院が難しい場合や、家族のサポートが難しい場合などでは、ソーシャルワーカーと相談して、様々な社会保険制度を利用したり、またその地域の病院と連携したりすることを検討しています。

スキンケア

 清潔と保清を心がけ、皮膚バリア機能を良好に維持することが目標です。ドライスキンケア、紫外線ケア、清潔ケアに努め、蜂窩織炎などの感染症とならないように日々のスキンケアを患者様自身で行えるように援助させていただきます。

MLD(医療徒手リンパドレナージ)

 貯留しているリンパ液を貯留が減少する方向に誘導していきます。貯留の多い部位では患肢の形状や関節の可動域が悪いため、ほぐし手技などを用い、形状と皮膚・軟部組織の硬度を調整することで、圧迫療法や運動療法の効果を高めます。
また、リンパシンチグラフィー・ICGリンパ管造影検査の結果参考に誘導方向の選定を行い、表在リンパ管・深部リンパ管・静脈や軟部組織を利用した誘導を行っていきます。

圧迫療法

 複合的治療の中心であり、当センターでは、過不足のない適切な圧迫のできる弾性着衣の選定のために、リンパシンチグラフィー・ICGリンパ管造影検査の結果をもとに圧迫範囲の決定を行い、重症な患者様には入院治療にて多層包帯法で患肢の形状と整えてから、圧迫圧測定器を用いて段階的な圧勾配が保てるように圧迫圧測定を行い、患者様が継続的に圧迫可能なように装着練習を実施しています。

運動療法

 圧迫下運動療法、挙上位運動療法、有酸素運動を組み合わせて実施しています。また、術後の関節可動域制限に着目し、早期に愛護的な関節可動域練習や筋膜リリース、ストレッチなどを実施することで、安楽な関節可動域拡大を行っています。安楽な可動域が拡大することで、職場復帰や家庭での役割の再獲得を果たすことでの活動範囲の拡大を目指しています。

手術療法

 リンパ浮腫の治療は複合的治療が基本ですが、手術を追加することにより更なる治療効果を生むことがあります。実際の手術療法には、リンパ管静脈吻合術(LVA)、リンパ節移植術、減量手術(脂肪吸引術、皮膚皮下組織切除術など)があります。 LVAやリンパ節移植術は岡山大学で主に行い、当院では脂肪吸引術を主に行います。 代表的なLVAと脂肪吸引術について説明いたします。

LVA (リンパ管-静脈吻合術)

ICG検査にてリンパ系のルート障害を詳細に評価した後に、どの部位でリンパ管と静脈を吻合すべきかを、一人一人の患者様で検討しその計画を立てます。 麻酔下で小さい皮膚切開を行い、ICG検査で特定されたリンパ管を確認し、周囲の細い静脈と顕微鏡下で吻合します。
下肢では、鼠径部(足の付け根)や大腿、下腿が、上肢では、上腕、前腕、手背で行います。手術は、患者様と相談して局所麻酔(入院または日帰り)または全身麻酔(入院)で行います。
基本的に、術前と同じく術後の保存療法は必要です。 ただ、上肢でむくみが早期の場合に、保存療法が不要になる方がおられます。下肢では自覚的なむくみの症状の軽減が認められることが多いです。上肢も下肢も病期が進行していますと、その効果は少ないです。

脂肪吸引術

 リンパ浮腫が高度に進行し、これ以上保存療法やLVAで効果が望めない場合に行います。
脂肪吸引、皮膚皮下組織の切除、またはその両方を行うことがあり、LVAを併用することもあります。
全身麻(入院)酔で手術は行います。術前と同じように術後も保存療法をしっかりとすることが重要です。