○ 弾性着衣の圧迫圧について


今回はみなさんが普段から装着されている弾性着衣に注目してみようと思います。 弾性着衣の着圧は上下肢ともに遠位で圧が強く、近位で圧が低くなる段階的圧迫圧で作られています。下肢のストッキングにおいては足関節の着圧を10とすると、大腿近位部で4程度の圧となり、上肢のスリーブでは手関節部の着圧を10とすると、上腕近位部で7程度となるような圧勾配に設定されています。上肢は下肢と比較して重力のかかる程度や頻度が少ないことから、圧勾配が小さく設定されています。この圧勾配があることで静脈血やリンパ液を心臓方向へと流れやすくなっています。圧迫療法はリンパ浮腫治療ではかかせないものですが、その圧迫も間違った圧迫をしてしまうとかえって症状を増悪させてしまう可能性もあります。今回は当院で実際に着圧を測定し関節部にどの程度圧がかかっているのかをみてみました。圧迫圧の変化を確認し、生活の中での注意点を考えてみようと思います。
下肢の浮腫で装着するストッキングを装着し、大腿部、膝裏、ふくらはぎ、アキレス腱、足関節前面、足背の6点で測定しました。(表1)


表1 膝屈曲角度別弾性着衣圧迫圧(平編み 圧迫クラス2 ピコプレスにて測定)



安静に膝を真っ直ぐ伸ばした状態では、膝裏に18oHg、足関節前面に40oHgの圧がかかっていました。椅子座位になり、膝関節を90°曲げると43mmHgへ上昇し、(写真1)膝関節120°まで曲げると95mmHgまだ上昇しました。(写真2)足関節では足首がちょうど90°になる位置で48oHg、つま先が少し上を向くと66oHgへと上昇しました。
椅子坐位をとることは日常生活では非常に多いので、写真3のような関節を曲げすぎない座り姿勢をとることも大切と考えます。


(写真1)



(写真2)



(写真3)



次に上肢の浮腫で使用するスリーブを装着し、肘関節の内側と手関節の手の甲側の2点を測定しました。(写真4)安静で関節部が伸びた状態では、肘関節部に9oHg、手関節に18oHgの圧がかかっていました。手関節を手掌面に曲げると36oHg、手の甲側に曲げると23oHgへ上昇しました。肘関節では50°屈曲位では16oHg、(写真5)90°屈曲位では63oHgとなり、ともに上昇を認めました。よくみかける光景である関節部に生地が重なっている状態をつくって圧迫圧を測定しました。生地が重なっている場合には曲がり角度が小さくとも圧迫力が肘関節で26oHgまで上昇しました。(写真6)関節の曲がり角度や姿勢で弾性着衣の段階的圧迫圧は崩れてしまいます。圧勾配が崩れることで静脈血やリンパ液の円滑な移動の妨げとなります。また、長時間同一姿勢とってしまうことで状態を悪化させてしまう可能性があるため注意が必要です。普段何気なくとっている姿勢ですが、時にふっと思い出して弾性着衣をくい込ませない生活スタイルを意識していただければと思います。


(写真4)



(写真5)



(写真6)





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