2017年9月25~29日でスペインはバルセロナで開催された国際リンパ学会に木股教授以下、山田、越宗、品岡の4名で参加してきました。
この学会は、リンパ学に関連する国際学会で2年に1度開催されていますが、リンパの解剖や画像検査、免疫学、リンパ浮腫の保存的治療と外科治療、患者教育など多岐にわたる内容を含んでおり、日本のリンパ浮腫外科治療を行っている医師も多く参加しています。
学会長はリンパに長けた欧米の先生が務められることが多いためもあり、前回はサンフランシスコ、前々回はローマ、その前はスウェーデン、そのまた前はシドニーと、参加者にもうれしいロケーションとなっています。
今回はバルセロナということでヨーロッパでも有数の観光地ですが、開催1か月前の8月17日にテロ攻撃事件があり残念ながら100名以上が死傷されました。被害にあわれた方には心からお悔やみ申し上げます。

国内のリンパ学会もそうですが、最近は「リンパ学」というよりも「リンパ浮腫学」という内容が非常に増えており、今回のプログラムを見てもリンパ浮腫に関する話題、とくに外科治療(手術)のシンポジウム・演題が多く見受けられました。かくいう私も、現在取り組んでいるLVAと脂肪吸引のハイブリッド手術について発表してきたのですが、いろいろな反響をいただきました。とくに脂肪吸引に関しては第1人者であるスウェーデンのBrorson先生直々にコメントをいただいたのですが、欧米と日本ではリンパ浮腫に関してはずいぶんと医療保険制度の差異があり、同じ方針を国内で実施するにはハードルが高いと感じました。私は、日本で行うリンパ浮腫外科治療(とその後の大事なケア方法)をさらに改良してベストな方法を探求したいと考えています。









また、越宗先生は世界標準のICG蛍光リンパ管造影検査法を確立するための、運動負荷を加えた検査手技について報告しました。このICG蛍光リンパ管検査ですが、実際に受けられた患者さんもおられると思いますが、実は標準的な検査方法は定まっておらず、造影剤を注射する部位も観察のタイミングも検査担当者ごとにバラバラでした。このため、検査の比較が出来ず、当然治療の効果判定にも使えないという状況でした。この検査を標準化し、いつ誰がやっても同じような結果が出る、それを目指した研究です。
では、造影剤の注射部位はどこが良いのか?? これが一番のキモです。これを決めるためには、どこに造影剤を打つとどのリンパ管が染まるかということを調べなくてはなりません。これについては、岡山大学解剖学教室の品岡先生が多数のご遺体を用いてリンパ管の解剖研究を行っており、このデータに基づいた最適な注入ポイントを決定することが出来ました。今回品岡先生はこのご遺体を用いた正常リンパ解剖の検査手技について報告しました。リンパ浮腫の診断・治療に直結する、非常に有用なデータが今後も出てくることが期待されます。
ところで今回の学会で気になったのは、リンパ浮腫手術前の評価や手術成績について、国外・国内を問わず、リンパの画像評価での変化、あるいは機能評価での変化について言及している発表が非常に少なかったということです。中には写真の評価もなく、周径変化のデータも提示しないまま、改善率が何パーセントであったという話をされておられる方もあり、納得がいかないと感じました。リンパの機能評価は非常に難しく、過去にはいろいろな方法が報告されていますが、現時点でこれがベストという方法は残念ながらありません。LVAやリンパ節移植は、直接ボリュームを減じる手技ではなく、リンパの流れを改善することを第一目標としたものなので、何らかの方法でこれを証明しないと手術治療への信頼は得られないまま淘汰される可能性もあるかと思います。




リンパ浮腫脂肪吸引術の第一人者 H. Brorson先生と




Macquarie大学H. Suami先生と岡山大学のメンバー



今回の学会長であるMasia先生の掲げる学会のタイトルは、「科学的な根拠に基づいて経験をシェアし、知識を深めよう」ということでした。リンパ浮腫の治療において科学的な根拠という点はまだまだ不十分です。リンパの解剖・生理機能を熟知して、そこからさらにリンパ浮腫という病態の解明、そして治療法の検討へとやるべきことはたくさんあります。私たちはこの目標に向かって研究を進めながら臨床の治療を行ってゆきたいと思います。

(2017.11.15 山田)



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