リンパ浮腫に関する基礎研究
第10回 ツキイチコラム

光生病院リンパ浮腫治療センター 形成外科 小野田 聡

光生病院リンパ浮腫治療センター形成外科の小野田です。

火曜日に光生病院の外来を担当させて頂くようになって1年が過ぎました。光生病院では医師・看護師・リンパ浮腫療法士が一体となってリンパ浮腫治療にあたっており、非常に働きやすい環境です。佐能理事長、小出名誉院長、土持センター長、木股教授をはじめ、リンパ浮腫治療センターを支えて頂いている方々にこの場を借りて御礼申し上げます。

私はこの3月まで岡山大学の大学院生としてリンパ浮腫に関する基礎研究を行っていました。今回はその事についてお話しさせて頂きます。リンパ浮腫治療は我々形成外科の領域でも比較的新しい分野の一つです。治療法としては圧迫療法やリンパドレナージなどの保存的治療と脂肪吸引術やリンパ管静脈吻合術(LVA)などの外科的治療に大別されます。この内、LVAは局所麻酔下で施行可能なことや幅広いステージの患者さんに適応可能なことから多くの施設で第1選択の術式となっています。しかし、このLVAには術後どれくらいの吻合部開存率が得られているのか、閉塞の原因は何か、吻合部にどのような経時的変化が起こっているのかなどまだ解明されていない様々な問題が残されています。私は大学院で研究を行う際にこの様な臨床における疑問点を解決してみたいと考え、LVA術後変化の詳細を研究することにしました。実際に患者さんのLVAを行った後に組織採取を行うことは出来ませんので、ラットを使って簡易的なLVAモデルを作成して研究を行いました。この結果、LVA術後の開存率の経時的な変化や術後閉塞の要因、理想的な吻合法などについての有用な情報を得ることができました。この成果は、形成外科領域では最も権威ある雑誌であるPlastic and Reconstructive Surgery誌に掲載することができました。(Plast Reconstr Surg.2016 Jan;137(1):83e-91e.)

光生病院においては、リンパ療法士さんや土持先生、病棟スタッフの支えによりリンパ浮腫治療の中心が教育入院などの保存的治療となっています。今後は今回の研究の成果を実際の手術に反映できるように、少しずつLVAの手術も治療に組み込んでいきたいと思っています。今後ともよろしくお願い致します。

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